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2024.08.18
おだりょうこ

シェリングエコノミーには消極的?イギリスの経済共有の実情【世界のシェアリングエコノミーに学ぶ・イギリス編】

「Uber」をはじめ、アメリカ・サンフランシスコを拠点に発展してきたシェアリングエコノミーは、遊休資産の活用モデルとして関心が高まっており、2025年までには3,350億ドルの潜在的利益が出る市場になることが見込まれています。一方、シェアリングエコノミーが普及していくに伴い、新たに対処すべきさまざまな課題が顕在化しているのも事実です。

そこで今回は、イギリスにおけるシェアリングエコノミーの動向を例に、現行規制との関係や規制の在り方などについて掘り下げてみました。

イギリスにおけるシェアリングエコノミーの動向

イギリスと聞くと格式が高く、礼節を重んじる国民性というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし、先進国でありながら地域によって経済と階級に格差があるのが実情です。その現状を如実に表しているのが、シェアリング自転車サービスの撤退です。撤退に至った経緯から、イギリスの経済格差とシェアリングエコノミーの関係性について、ひも解いてみましょう。

イギリスのシェアリングサービスの利用意向は30%以下

中国や韓国ではライドシェアを中心にシェアリングサービスの利用意向が80%以上と高いのに対し、イギリスは30%とヨーロッパ諸国の中でも低いことがわかっています。その背景にあるのが、先に述べた経済と階級の格差です。北部の工業都市・シェフィールドやマンチェスターでは、ライドシェアの自転車の盗難や放置、破壊などが相次ぎ、サービスが成り立たなくなったため、中国発の「ofo」や「oBike」が撤退することに。

 

そもそもシェアリングは、共有するモノ、サービスを大切に扱うことで成り立つビジネスです。経済的な理由からそのモラルが低くなると、公共サービスやシェアリングサービスがうまく機能しなくなるため、イギリスのような先進国でも、地域によっては上記のような問題が発生すると考えられます。

住宅共有でシェアリング先進国を目指すイギリス

シェアリングエコノミーに消極的だったイギリスですが、弾みをつけるきっかけになったのが、2015年にイギリス議会で可決された住宅共有を認める新法です。新法によって、イギリス国民は自宅や持ち家を年間90日までシェアすることが可能に。フランス・パリやオランダ・アムステルダムではすでに施行されている住宅共有により、イギリス国内の居住者であれば、だれでも旅行者を自宅に泊めることができるようになりました。

 

従来、イギリスでは家を短期で貸す場合、市議会からの許可が必要であり、その手続きは複雑かつ、費用もかかっていました。新法が可決されたことで入居者が家主から許可を取る手続きが簡略化されたことに加え、政府公務員に対し、公費出張の宿泊予約にシェアリングエコノミーを奨励。また、 マンチェスター市内とリーズ市内で「シェアリング・シティ」事業を試験運用し、交通、公共ペース、医療、福祉の各分野でのコラボ活用モデルの確立を目指しています。

「余った食材」をシェアするアプリ「OLIO」

住宅共有を皮切りに、シェアリングエコノミーの世界的リーダーを目指すイギリスでは、近年さまざまなシェアリングサービスが誕生しています。なかでも話題を集めているのが、フードロス問題を解決するアプリ「OLIO(オリオ)」です。

 

イギリス発のスタートアップとして誕生したこのサービスは、地域社会や家庭で生じる膨大な量の食品ロスを解決するとして注目を集め、現在はイギリスを中心にシンガポール、メキシコ、アルゼンチン、チリ、コロンビアなど、世界で約700万人がアプリに登録しています。

 

利用方法は至ってシンプル。ユーザーは食品の写真を撮り、説明文と指定の待ち合わせ場所を画面の指示に従って入力、アップロードします。その投稿を見た近隣住民は、欲しいアイテムを投稿者に通知、投稿者が承諾したら指定の場所に受け取りに行く仕組みです。個人の他、イギリス大手スーパーマーケット「Tesco(テスコ)」などから引き取った食品の出品もしています。

オフラインならではのコミュニケーションも話題に

シェアリングサービス市場の拡大には、IT技術とインターネット環境の発展が貢献していることは紛れもない事実です。オンライン上での人間関係は一見豊かになったように見えますが、一方で、シェアリングサービスを提供する側・される側の信頼性の不透明さが問題になっています。

 

「OLIO」はオンラインとオフライン、それぞれのメリットをサービスに取り入れることにより、ご近所さんや隣人とのコミュニケーションを可能とするツールです。テクノロジーを通して「コミュニティの強化」に取り組んでいることも、「OLIO」が高く評価されている要因と言えるでしょう。

 

SNSでの利用者の声

  • ご近所付き合いが円滑になった
  • 近隣にどんな人が住んでいるのか。「OLIO」を通じて知ることができた
  • 食品の他、日用品の貸し借り、自家製料理も提供ができるのもうれしい
  • フードロスに貢献している意識が高まった

 

■OLIO

https://olioapp.com/en/

イギリスがシェアリング先進国になるための課題

シェアリングエコノミーは新しいビジネススキームです。そのため、法整備が追いついていない部分もあり、いまだ、法的にグレーなまま運用しているサービスがあるのが実情です。このような不透明さに加え、イギリスにおける地域の経済・階級の格差が市場拡大を妨げる原因になっていると考えられます。

 

イギリスがシェアリング先進国に名乗りを上げるには、万一のときの補償やサービス提供時の安全面の整備が必要不可欠。また、シェアリングエコノミーで得た収入を申告しない提供者への税制面の改善も望まれます。

 

 

環境改善や渋滞緩和が期待できる電動キックボードの普及促進をリードしてきたイギリス。法整備は今後の大きな課題となるでしょう。

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