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2024.07.10
SUUTAマガジン編集部

時代を越えて自分の手元にある奇跡。古着の魅力とは

「古着に出会うきっかけになる」ことを目指して、年代やジャンルに囚われない魅力的な商品を取り扱っています。

店名YoYewのYewは、ヨーロッパに自生する針葉樹の「セイヨウイチイ」のことを指します。
また、古代ゲルマン民族が用いていた「ルーン文字」においてイチイを表すYは「死と再生」の象徴とされています。

「「価値の再発見」という古着の魅力をイチイの樹に重ね、一度手を離れて再び手のなかに戻る玩具「ヨーヨー」と掛け合わせ、店名を「YoYew」としました」と語るのはオーナーの恩田(おんだ)さん。

古着を好きになった経緯から、古着の魅力、古着をレンタルする意味について話を聞きました。

サブカル好きが高じて古着屋さんに

――古着に興味を持った経緯を教えてください。

 

恩田さん:学生の頃、サブカルチャーがすごく好きで、バンド、映画、舞台、アニメに興味があったんです。ライブハウスや劇場もある下北沢や高円寺といった、古着のメッカと呼ばれる町で遊ぶことが多くなって。葛飾区に住んでいたので遠いんですけど(笑)自然と、古着を見かけることが増え、自分でも着るようになりました。学生でお金も無かったので安くて変わったデザインの古着を中心にハマっていきましたね。

 

――そして、ご自身で古着屋さんになろうと思ったんですか?

 

恩田さん:元々美術に興味があって、文学部で美術史などを勉強していました。そのなかで漠然と、「将来小さいアートギャラリーをやりたい」と思うようになって。個人経営にも憧れがあったので、洋服を陳列しつつ、作家さんの作品を一区画で展示できるような店舗を持つことを目標にしました。

 

でも、古着屋さんはあくまで趣味の延長という位置づけで本業もありますし、いきなり店舗を借りるのはハードルが高かったんです。なので、2019年の年末ごろにお店の名前やロゴを考えて、最初の買い付けを行い、まずはオンラインショップを開設しました。するとオープンからしばらくして、Vintage. Cityというサイトの担当の方から「うちでも掲載しませんか」と依頼がきて。さらに、そのサイトを見たRAIL SIDE COFFEE & VINTAGEという商業施設の担当の方が「コーヒーショップや雑貨などカルチャー含めた商業施設を渋谷にオープンするので、古着屋として出店しませんか」とお声がけくださったんです。

 

ーーすごい巡り合わせですね!そして、2年ほど店舗を運営されていたんですよね。

 

恩田さん:渋谷の再開発の都合で退去しなくてはいけなくなりましたが、こだわって選んだ古着以外にもシルバーアクセサリーなどの展示兼・販売もしていました。店舗をやりたいという夢が叶って幸せでしたね。

 

ーーRAIL SIDE COFFEE & VINTAGEには他にも古着屋さんが?

 

恩田さん:ミリタリーに強いところ、アメカジが豊富なところとかヨーロッパ系、ストリート、シックな感じといろいろあって面白かったです。

時代を越えて人から人へ受け継がれる古着

ーー古着のジャンルとして、恩田さんはどこをターゲットにしているんですか?

 

恩田さん:古着に興味を持ってほしいということをコンセプトに掲げているので、よくいえば幅広く、悪くいえばしっちゃかめっちゃかです(笑)。統一感がありません。ただ、古着に興味を持った方に、「自分はこういうテイストの服が好きかも」と気づいてもらえたらいいなと思いながら、商品をセレクトしています。なので、なるべく手ごろな価格で提供したいという思いはありますね。

 

ただ、実店舗では安い商品があまり売れないという状況が続いたんです。

 

ーー高い商品の方が売れたんですか?

 

恩田さん:そうなんです。RAIL SIDE COFFEE & VINTAGEの他のショップの価格帯が高いということもあると思うんですが、価格が低い=安物と捉えられてしまって。立地や施設の特性上、合ってなかったんでしょうね。安い古着を求める方が来るようなところではなかったんです。

 

ーートレンドに敏感で高いものも買うような方が多かったんですかね。

 

恩田さん:そうですね。品質がよくて適正な価格なら、高くてもほしいと思うようなお客さんが多かったですね。そこから、そのニーズに答えられるように、年代が古くてよいものを取り揃えるようにしました。

アクセサリーの種類も豊富

ーーたとえば、どのようなものですか?

 

恩田さん:一番わかりやすいのはデニムですね。デニムジーンズはどんどん値上がりしています。古くてよいものは数が減っていくしかないので、どんどん高騰していますね。

 

ーー革ジャンとかもそうですか?

 

恩田さん:そうですね。古着の定番ブランド以外でも、元々手間暇かけて作られた、素材がよくて長く使える状態のよいものは価値が高くなる傾向があると思います。

こだわって選んだ商品の数々

ーー状態がよいというのは、過去に着ていた人が丁寧に使っていたということなんですか?

 

恩田さん:はい、保存状態がよい場合もありますし、リペアした箇所が味になって深みを出している場合もありますね。なので、古着って、一つひとつに物語があるんです。たくさんの人の手を渡って、すごく遠いところから時を越えて、今自分の手元にあるって奇跡じゃないですか。前の持ち主がどう使っていて、どうやってここに辿り着いたのかっていう経緯を想像するのが楽しいですね。

 

ーー既製品とは違った楽しみですね。

 

恩田さん:おっしゃる通りです。古着って、着るのが好きな方もいれば、コレクションするのが好きな方もいるんです。有名なアーティストが作ったとか、ブランドがすごいとかでもない限り既製品ではコレクションするって発想にはなりませんよね。

 

ーーそうですよね。あと、たくさん陳列されているなかから「これだ!」ってものを見つられたときは嬉しいですよね。

 

恩田さん:次に来た時にはもう出会えないかもみたいな、1点ものを見つけて手に入れる楽しみがありますね。

ーー恩田さんと話していると古着への愛が伝わってきます。

 

恩田さん:古着は中古で安いだけじゃないんだな、歴史があるからこそ価値を見出す人がいるんだなって気づいた時に古着への愛が強くなりました。たとえば、古着のタグを見るじゃないですか。それでタグについて調べてみると「このブランドのこのタグは80年代のもので、作られていた期間はたった数ヵ月、しかもあの工場でしか作られていなかった!」みたいなことがわかったりするんです。そんな貴重なものが、今ここにあるんだって、うれしくなるんですよね。

 

ーー聞いているだけでおもしろいです。

 

恩田さん:他にも、年代によってステッチや金具の付け方、金具の裏側に刻印されている数字とかが違うんですよ。あの工場がなくなる直前に作られたものだ、とかわかってくると楽しくて。興味を持ち始めるとキリがない、魅力的な世界ですね。

古着への愛情を糧に、忙しいなかでもコツコツと継続してきた

ーーそもそもどのように仕入れをしているんですか?

 

恩田さん:オンラインで開店しようと決めた矢先にコロナが流行し始めたので、海外行くと意気込んでいたけど、できなくなったんです。そのため、海外にバイヤーが常駐している国内の業者さんと取引をして仕入れていますね。本当はアメリカとかヨーロッパとか行きたいんですけどね(笑)。海外に行って、手持ちで持って帰ったり、空輸したりしている方もいますね。国内の卸の業者だと、仕入金額にミニマムの設定があり、個人には厳しいんです。

 

ーーミニマム設定?

 

恩田さん:「最低でも1回10万円から買い付けしてくださいね」という感じの設定ですね。「初回だけはミニマム設定しませんよ」とか、「初回だけは3万円から買い付けできますよ」とかいう場合もあるんですけど。自分は古着屋以外にも仕事をしていて、古着だけで黒字になる必要がないのでどうにかなっている部分はあります。 将来的には古着で食べていきたいですけど、現状はまだ趣味の延長なので。

 

ーーそうだったんですね。本業では何をしてらっしゃるんですか?

 

恩田さん:美術業界にも足を突っ込んだり、いろんな仕事を経験しましたが、接客業が多かったですね。今は広告やウェブ作成のディレクターの仕事を勉強させてもらってます。今まで経験した事のないまったく畑違いな業界なので苦戦していますが、マーケティングの知識やtoB向けのビジネススキルを身に着けて、将来的に古着屋さんの経営にも活かしていきたいですね。

ーー本業をしながら4年間も古着事業を継続してきたんですね。

 

恩田さん:オンラインショップは商品さえ手元にあれば問題ありませんし、RAIL SIDE COFFEE & VINTAGEでは僕が不在の時は施設の方が店舗に立ってくれていたので。とても助かりました。

 

ーー今後はどのように古着事業を進めていく予定でしょうか?

 

恩田さん:しばらくは本業に打ち込みたいので、オンライン販売に専念しようかなと思っています。ただ、自分が店舗に立ち続けるのはあまり現実的ではないなかで、最近増えている無人の古着販売店を開くのはありだとも考えていますね。

 

ーーうちの近くにもあります。無人で好きな場所で開店できるならよいですよね。

 

恩田さん:古着屋って、あまり積極的に接客しないことが多いんですよ。お客さんは商品をじっくり見たいですし、店員より古着に詳しいなんてこともざらにありますし。僕なんかは特に、気に入ったものがあればどうぞってスタンスなので、無人で接客がなくなること自体にはあまり問題を感じていません。ただ、現在の無人の店舗はどちらかというと、リサイクルショップに近い感じなんです。1枚1,000円ぐらいのものが並んでいて、好きな商品を見つけてQRコード決済して。僕は、そういうのはやりたくなくて。価値があるものを販売したいので、もしやるなら店舗のレイアウトや宣伝方法などは慎重に考えなくてはいけないと思っています。

古着の味わいは写真では伝わらない。実際に触れて着てみてほしい

ーーSUUTAに興味を持っていただいた経緯を教えてください。

 

恩田さん:高価格帯のものをレンタルで試せるのがよいと思ったからです。ジーパンを例にすると、知識がないと変なものつかまされる可能性もありますし、そもそも適正価格がわからない方が多いと思うんです。古着に興味を持ったけど、ビンテージってよくわからない、知識的に不安があるから買えない、って方にレンタルして試していただきたいですね。

 

ーー実際に手に取って試せるというのが魅力ですよね。

 

恩田さん:そうなんです。オンラインだと写真と手元に届いた実物が全然違ってガッカリってケースがあるんですよね。ジーパンでいえば、照明の当て方とか写真の色味で実物と大きな差が出てしまうし、シルエットも平置きで撮影するのと着用して撮影するのでは印象が大きく変わるので商品の魅力を正確に伝えるのが難しいんです。

 

ーードレスも出品していただいていますが、実際着ないとわかりませんよね。

 

恩田さん:実店舗で高価格帯のものが売れたのは、実物を見られたからこそだと思いますし、「店舗で試着できますか?」と電話をもらってご来店いただくケースも多かったんです。オンラインの写真を見ただけでは購入に踏み切れないけど、実際の物を見て試着したら買おうと思ってくださる方も多くて。そのため、まずはレンタルで、軽い気持ちで試してみてもらえると嬉しいですね。

 

ーーそうですね、素敵な商品がとても多いので、ぜひご覧いただきたいですね。

 

恩田さん:古着の興味を持つきっかけの1つになれたらうれしいというところから古着事業を始めたので、購入せずとも興味さえ持っていただけたら嬉しいです。「こんなカッコいい商品をこのくらいの価格でレンタルできるんだ」と思ってもらい、気軽に ビンテージものに触れてもらうきっかけになれたらいいなと思います。

 

ーー恩田さん、ありがとうございました。

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