料理を色鮮やかに引き立ててくれる食器。季節やコースに合わせたよい器を揃える飲食店も多いもの。しかしそのためには、多額の費用とお皿の在庫管理が課題になります。
株式会社クボタ産業は、人気ブランドの有田焼や美濃焼の食器レンタル事業をメインに、食器販売事業やOEM事業を展開している企業です。
同社が取り扱う食器は、40年以上の歳月をかけて収集された25万点以上の食器。コースメニューやイベントに合わせてさまざまな食器を提案しています。今回は、株式会社クボタ産業営業部 草村龍心(くさむら・りゅうしん)さんに、同社の強みや今後の展望についてお話を伺いました。
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――まずは、貴社の事業内容を教えてください。
草村さん:弊社の事業は大きく分けると、食器のレンタル事業と販売事業、オリジナル商品制作事業(OEM事業)の3つです。レンタル事業では25万点以上の食器を月額制で提供しており、和食器や洋食器、ガラス食器、グラス、カトラリーまで幅広く取り扱っています。店舗スタイルや用途に合わせて、必要な枚数を自由に選べるのが特徴ですね。
販売事業では、約40社の窯元とのネットワークを活かし、有田焼や伊万里焼などの陶磁器をお手頃価格で販売しています。さらに、オリジナル商品制作事業では、店舗オリジナルの器や会社のロゴ入りアイテムなど、お客様ニーズに合わせた商品作りも手がけています。
――食器のレンタル・販売事業を始めたのはいつですか。
草村さん:佐賀県有田町の出身の創業者が1969年に有田焼の販売をスタートし、1985年にレンタル事業も始めました。2023年には株式会社CYホールディングスが事業承継を行っています。
――事業承継に至った経緯と決め手を教えてください。
草村さん:創業者が前社長の増田へ相談を持ちかけたことがきっかけでした。多くのお客様に支えられてきた食器レンタル事業でしたが、創業者の体調不良と後継者不足が原因で、廃業するかどうかの岐路に立っていました。話を聞くうちに、本事業が環境へ配慮したものであること・お客様とのつながりが濃く地域貢献にもなっていることを実感し、増田は事業承継を決断しました。食器レンタル事業は、新たな廃棄物を出さないサステナブルなビジネスモデルであり、長年利用されているお客様が多く、熊本に必要不可欠な事業だと感じたそうです。
――レンタルサービスの概要を教えていただけますか。
草村さん:取り扱っている食器は、佐賀県の有田焼や岐阜県の美濃焼などの人気ブランドを中心に、さまざまなメーカーのものを取り揃えています。取り扱い食器のジャンルも幅広く、和食器や洋食器をはじめ、椀物、小鉢、ガラス食器、グラス、カトラリーなど多岐にわたります。
レンタルプランは、1日・1ヶ月・3ヶ月・12ヶ月の4つがあり、とくに3ヶ月・12ヶ月の中長期プランが人気です。SUUTAのウェブサイトでは、1日・1ヶ月の短期プランを掲載しており、急な大人数の予約対応や季節限定メニューに合わせた食器の提供といったシーンで重宝されています。「繁忙期に食器を増やしたい」「新メニュー用に特別な食器を使いたい」といったご要望にも柔軟に対応しています。
――食器をレンタルすることは、お客様にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
草村さん:食器レンタルには3つのメリットがあります。1つ目は「コストの削減」です。たとえば、30席の飲食店が1枚5,000円の食器を5種類、30枚ずつ揃える場合、初期費用だけで75万円が必要です。さらに、食器は割れ物なので、破損や紛失があると追加で購入しなければいけません。職人さんの人手不足や原料代の高騰により、購入した商品が廃番になったり、同じ価格での購入は以前よりも難しくなっています。対してレンタルなら、安定的に利用でき、初期投資を大幅に削減できます。メニュー変更や新規開店時にあわせて、コストを抑えた食器への変更も可能です。
2つ目は「自由に食器を変更できること」です。飲食店において、料理の見た目は重要です。メニューに合わせて食器を変えるお客様もいます。ただ、メニューが変わるたびに食器を買い替えるわけにもいきませんし、一度購入したものを処分するにも廃棄の手間がかかります。そのため、多くのお客様が食器の入れ替えを断念しているのが現状です。ところがレンタルなら、季節のメニューや特別なイベントに合わせて、簡単に食器を変更できるのです。店舗の雰囲気やメニューにぴったりな食器を選べるのが大きな利点です。
3つ目は「保管スペースの有効活用」です。「新しい食器を購入するたびに使用しなくなった食器が増え、保管場所の確保が難しい」との声をお客様からよく耳にします。とくに都心部の飲食店では、限られたスペースの有効活用が大きな課題です。レンタルなら必要のない食器は返却できるため、保管スペースの心配がありません。意外にも、このメリットが一番好評です。
――レンタル食器の破損や劣化への対応について教えてください。
草村さん:食器に小さな傷がついてしまっても、お客様に修理費用をご負担いただくことはありません。ただし、破損してしまった場合は、1枚あたり500円の費用をお願いすることがあります。事前にその旨を説明し、安心して使ってもらえるよう努めています。
――レンタル食器を利用するのはどのようなお客様が多いですか。
草村さん:法人のお客様が8割、個人のお客様が2割です。法人のお客様は、旅館やホテル、飲食などのサービス業が6割、介護施設やゴルフ場がそれぞれ2割ずつを占めていますね。近年は、介護施設やゴルフ場の需要が増えており、それぞれのニーズに合わせた食器の充実を図っているところです。
――お客様からはどのような声が多いですか。
草村さん:1日・1ヶ月の短期レンタルでは「急な大人数の宴会に対応できて助かった」「質の良い食器を気軽に利用できて嬉しい」といった声をいただきますね。突発的な需要への対応に、重宝されています。
3ヶ月・12ヶ月の中長期レンタルでは「1皿90円や120円で質の良い食器が使えるのはお得でうれしい」「シーズンごとに食器を替えられるので、フレッシュな気持ちで営業できる」と好評です。また「来店客から『料理によってお皿がいろいろ変わって、飽きない。お店に通うのが楽しみ』と言われた」との声もありました。とくに「お店の雰囲気を季節ごとに変えたい」「来店するお客様に常に新鮮さを感じてもらいたい」と思う方のニーズとぴったりですね。
印象的なのは、格安の食器から当社の食器に切り替えた飲食店の例です。弊社の食器を使うことで、料理の見栄えが格段に向上し「お客様から高評価をいただいた」と言っていました。それを機に、メニューの価格帯を見直したり、新たなコースメニューを始められたりと、お店の新しいチャレンジにつながっているそうです。
食器が料理の魅力を引き立て、ビジネスの可能性を広げる存在になっていて、そのサポートができることをとても嬉しく思います。
――とくに人気のある食器を教えてください。
草村さん:一番人気は、自社ブランド『白磁ジャパン』の食器ですね。今はもう製造しておらずほとんどがレンタルに出ているため、在庫が少ない状態です。
次に人気なのはKOYO(コーヨー)というメーカーの洋食器です。お皿の縁は艶のあるブラックで、中央は白のシンプルなデザインがあしらわれて、高級感があります。シンプルな白色の入ったモチーフが、近年は好まれています。小鉢系も人気が高く、そのなかでも有田焼やガラス製のものが好評です。
――食器のトレンドはありますか。
草村さん:以前は鮮やかな色柄が人気でしたが、最近は「和モダン」スタイルが主流です。シンプルでありながらも、どこか温かみのあるデザインが好まれているようですね。このトレンドはしばらく続き、和食文化と現代的な美しさを融合させた食器の需要がますます高まっていくと思います。時代の変化に対応するためには、最新のトレンドの把握が欠かせず、定期的なカタログのチェックや市場の動向把握も重要になります。
ただ、弊社では、流行に左右されることなく有田焼や美濃焼の高品質なブランド食器を提供しています。長年にわたり愛されてきた食器は、料理の価値を高める力がありますからね。
――課題や困難に感じていることはありますか。
草村さん:長年にわたり熊本県のお客様にレンタルサービスをご利用いただいておりますが、人口減少に伴い、取引数が減少するという課題に直面しています。そこで、2024年2月に自社通販サイトを立ち上げ、従来のアナログ体制から脱却し、オンラインサービスを強化してきました。通販サイトのアクセス数は徐々に増加していますが、まだ県外のお客様へのアプローチが不十分です。そんななか、SUUTAのサービスに出会い、全国のお客様に会える機会が格段に増えており、うれしく思っています。
――食器レンタルを試したことがないお客様へ伝えたいことを教えてください。
草村さん:食器のレンタルのサービス自体、まだ馴染みがないかもしれません。しかし、実際に利用すれば、コスト面やスペース確保の面にメリットを感じてもらえると思います。「値段が高くてなかなか購入できない」「新しく購入しても置き場が無い」と感じている方には、ぴったりのサービスだと思います。ぜひ一度食器のレンタルの魅力を体験してみてください。
――今後の展望はありますか。
草村さん:伝統産業を守りながら、デジタルの力を借りて、地域の活性化をしていきたいです。食器レンタル事業は、必要な分だけ借りるというシンプルでサステナブルなビジネスモデルです。時代に即したサービスが広まれば、地球にも優しく、顧客にとっても大きな価値を提供できると信じています。お客様の満足度をさらに高め、レンタル事業を安定化させるとともに、販路を全国に広げていきたいですね。
また、陶磁器業界全体が依然としてアナログ管理に頼っており、大きな危機感を抱いています。私たちがデジタル化を推進することによって、業界全体を後押しするロールモデルになり、地域の伝統産業を新しい形で復活させたいと思っています。今後は、自社通販サイトやSNS、WEB広告を活用し、幅広い層のお客様にアプローチしていきます。
ーー最後に、SUUTAに期待することを教えてください。
草村さん:SUUTAのサービスを通じて、地方の中小企業では手の届かなかったマーケットに参画出来る点に、大きく期待しています。サイトを通じて簡単にレンタルできる仕組みも、弊社の目指す方向性にぴったりです。今後もSUUTAの手厚いサポートを受けながら、食器レンタルの利便性と魅力を全国のお客様に届けていきたいですね。
ーーー草村さん、ありがとうございました。