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2024.12.19
SUUTAマガジン編集部

‟人の心を癒やす”アートが持つ力。気軽に楽しめる絵画レンタルの可能性

「絵画を購入するのはハードルが高い」と思っていませんか?

そんな環境を変え、「気軽に絵画やアートに触れる機会を増やそう」と絵画のレンタル事業を始めたのは、広田豊子さん。2021年に東京・西新宿でオープンした『Art beans(アートビーンズ)』の代表を務めます。広田さんは美術系の本を扱う出版社に長年勤めたあと、知り合いの作家さんたちの協力を得て、絵画のレンタルをおこなうWebサイトとギャラリーを立ち上げました。

「アートには人の心を癒やす力がある」と語る広田さんに、アートの魅力やArt beansを始めた背景を聞きました。

INDEX

絵画のレンタル・販売をWebサイトとギャラリーでおこなうArt beans

Art beans インタビュー記事

ーーArt beansの事業内容を教えてください。

広田さん:Webサイトとアンテナショップ(ギャラリー)で、絵画のレンタルと販売、ギャラリーでは画廊として個展もおこなっています。レンタルは作品を出品したい作家さんにサイトに登録していただき、審査に通ると絵画の貸し出しを開始できます。「癒やしを求める人や場所に絵画を提供する」ことを目指し、2021年に西新宿でギャラリーをオープンしました。個人・企業・店舗・老人福祉施設・病院・ホテルなどへ、人々を癒やす絵画をお届けしたいと思っています。

ーーWebサイトだけではなく、お店でレンタルや購入もできるのでしょうか?

広田さん:はい、お店でレンタルも購入もできます。ご近所の人がふらっと立ち寄ってくださることもありますね。お客様のなかにはレンタルをしてみて、気に入ってそのまま購入する人もいます。

ーーお店では、作家さんの個展もやっているのですか?

広田さん:個展やグループ展も開催しています。直近でいうと、2024年11月29日からは日本画教室展、新年は建部弥希個展、森田和昌個展と続きます。さらに、個展や販売、レンタルに加え、ワークショップも開催しています。色遊びのワークショップはお年寄りから小さなお子さんまで、年齢を問わず楽しんでいただいていますね。色遊びには、アートに関する難しい知識は必要ありません。手軽に始められるので、あまり絵を描いた経験のない人にとっても、アートを始めるスタート地点になるんです。実際、5歳くらいのお子さんがすごく芸術的な絵を描いて親御さんがびっくりする、なんてこともあるんですよ。

認知症の母を見て「アートは癒やしになる」と実感

Art beans インタビュー記事

ーーご経歴を教えてください。

広田さん:私はもともと出版社に約20年勤めていて、陶芸の本や美術に関する技法書などの企画編集をしていました。また、『手芸&クラフト展コンテスト』を7年担当して、作家さんを発掘したり、世に広めたりする企画やプロデュースに携わっていました。このような仕事の関係で、作家さんとお話しする機会やつながりが多くあったんです。

ーー芸術関係のお仕事をずっとしていたんですね。広田さんご自身もアート活動をしているのでしょうか。

広田さん:小・中・高では美術部でした。さらに、40歳を過ぎてから油絵を始めました。油絵は難しいと考える人が多いですが、ある程度デッサンを描き、感性のまま重ねていけば意外と形になるんです。ストレス解消にもなりますし、楽しいですよ。また、趣味で器作りもしています。

Art beans インタビュー記事

ーーArt beansを始めようと思ったきっかけを教えてください。

広田さん:一緒に暮らしている母が、認知症や大きな病気を患っていまして。辛そうな表情を見せることも多いのですが、絵画を楽しんでいるときは痛みが和らいだ様子を見せたり、少し穏やかになったりするんです。「アートが母の心の安定につながっているのかもしれない」という実感がありましたね。

ーーアートの力に気づくきっかけになったのですね。

広田さん:今の時代は、多くの人が癒やしや和みを求めていると思います。それと同時に、日本には絵画を飾る文化があまりないとも感じていて。「癒やしを求める人に作品を届けるためにどうしたらいいか、レンタルはどうかしら」と作家さんたちに相談していたときに、「それいい!」と共感をいただきました。

そこで、絵画のレンタルをするWebサイト『Art beans』を立ち上げました。

ーーWebサイトを立ち上げたあとに、実店舗を開いた経緯を教えてください。

広田さん:新型コロナウイルスの影響を受けて、勤めていた会社が廃業してしまったんです。どうしようか悩んだ末に、「アンテナショップを作ろう」と一大決心をしました。12月末に廃業の話を聞き、そこから3か月で物件を見つけて急ピッチで準備を進めました。

ーーすごいスピード感ですね。

広田さん:かなり見切り発車でしたが、応援してくれる作家さんや仲間がいたのでどうにかなりました。アートが背中を押してくれたような感じですね。この物件との出会いも、本当に偶然でした。

レンタルの絵画で、癒やしを届ける

Art beans インタビュー記事

ーー実店舗を始めてから、大変だったことはありますか?

広田さん:最初のころは、数少ない作家さんとの繋がりで展示する作家や作品も少なく苦労しました。知り合いの作家さんたちにもお声がけをいただき、「どうしたらArt beansで心地よく展示してもらえるか、作品を置きたいと思ってもらえるか」を相談しましたね。

ーー相談に乗ってくれる人がいるのはありがたいですね。

広田さん:そうなんです。立ち上げ当時から手伝ってくれている作家さんがアドバイスをくれました。ときには厳しい助言をしてくれることもありましたね。みなさん“作家”という立場ではなく、私と同じ思いを持って“仲間”のような感覚で関わってくださって。ギャラリーを経営する立場でも作家目線でもなく、「ギャラリーと一緒に自分も大きくなっていくんだ」という気持ちで関わってくれる人が多いんです。

ーーレンタル利用で印象的なお客様はいますか?

広田さん:とある老人ホームでは継続してレンタルしてもらい、毎月4〜5枚の絵画を入れ替えています。施設長から「入居者が新鮮に心地よく過ごせるよう、毎日通る長い廊下の目線を変えたい」と、ご依頼いただきました。さらに、「ただ飾るのではなく、ギャラリーという認識にしたい。毎回テーマや作家さんのプロフィール、絵の説明などのキャプションもつけてほしい」というご要望をもらいました。

ーー作家さんにとってもよい紹介になりますね。

広田さん:そうなんです。しかも、「癒やしを求める人や場所に、心を落ち着かせるような絵画を提供する」という私たちのコンセプトにもマッチしていて、大変うれしいですね。

Art beans インタビュー記事

ーーレンタルしている人たちからの反応はいかがですか?

広田さん:入居者からは「壁が息をしているようだ」と言われました。入れ替えの作業をしているときも、後ろから絵を見て感動する声が聞こえてきてうれしく思いますね。いつも楽しく携わらせてもらっています。

定期的に絵の入れ替えをして、絵から四季や時の流れが感じられるのもレンタルのいいところだと思います。「オレンジ色の絵だから、もう秋だね」「あのころは、あの絵が飾られていたよね」と、絵と時期や記憶をリンクさせてもらえたらいいですね。

ーー利用者は、どのようにArt beansを知ることが多いのでしょうか?

広田さん:自宅や施設、会社などに絵を飾りたい人が、インターネットで検索して見つけてくれることが多いですね。老人ホームの施設長もインターネット経由でArt beansを知ったと言っていました。

ーーレンタル利用者は、個人と法人どちらが多いのでしょうか?

広田さん:半々くらいですね。個人宅に飾りたいという要望はもちろん、人気歌手のミュージックビデオやCMに使われたこともあります。

ーーおすすめの作品はありますか?

広田さん:初期のころから協力してくれている、美術家・森田和昌さんの油絵抽象画「イロアソビ」は人気ですね。観光客にも購入されています。また、テレビ番組で取り上げられたことのある、色鉛筆作家の林亮太さんの作品もおすすめですね。色鉛筆5色のみで描いたとは思えない、油絵にも負けない質感があります。どちらの作品もSUUTAのサイトに掲載されています。

Art beans インタビュー記事

絵画 油絵抽象画 イロアソビ 森田和昌作

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色鉛筆画 古いタンクのある風景 南房総市岩井 林亮太作

アートは「使うもの」ではなく「そばにいてもらうもの」

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ーー広田さんは、アートとはどんなものだと思いますか?

広田さん:アートは「使うもの」ではなく「そばにいてもらうもの」だと思います。そばに置いて、自分の心を投影したり、日々のコンディショニングを手伝ってくれるものです。そのアートがそばにいて心地よいのか、それとも違和感があるのか、生活の一部にして感じてみてほしいですね。

ーーどんな人にレンタルを利用してほしいと思いますか?

広田さん:老若男女問わず、幅広くご利用いただきたいですね。また、「絵画なんて手が届かない」と思っている人にも、ぜひレンタルしてみてほしいです。違和感があればいつでも別の作品に取り替えられるのも、レンタルのメリットだと思います。いきなり購入するのはハードルが高いと思うので、まずは気軽に試してほしいですね。

ーー一緒にレンタルの可能性を広めていければと思います。今広田さんが感じている課題はありますか?

広田さん:病院関係の施設にレンタルを広めて、より多くの人を絵で癒やしたいですね。また、個展やグループ展を主催しているため、今はレンタル数よりも販売数の方がはるかに多いんです。今後はレンタルももっと広げていきたいと思っているので、SUUTAと協力していきたいです。

Art beans インタビュー記事

ーー今後の展望を教えてください。

広田さん:多くのお客様に認知してもらい、安心してレンタルできる環境を整えていきたいです。不要になったら捨ててしまうのではなく、その時々の状況や感性で選べる合理性がレンタルにはあると思います。「所有よりレンタルの時代」を広めていきたいです。さらに、アートや新しいものを融合して、世の中を変えていきたいですね。それから、作家さんの個展が終わったときにサイトやSUUTAでもピックアップするなど、ギャラリーとサイトを融合させたいと思っています。「日本、特に東京のアートレンタルと言えば、Art beans」と言われるようになりたいです!

ーー広田さんありがとうございました。

家具・住まい>インテリア

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