「DIYに挑戦したいけど、いきなり工具を全部揃えるのはハードルが高い」
そんな方におすすめなのが「工具レンタル」です。群馬県高崎市にあるN-garageの代表・中嶋太悟さんは、出張型の車両整備業を営むかたわら、自身が所有する工具を貸し出すサービスを始めました。Webサイトには、電気のこぎり・電気かんな・ドリルなどの工具がずらっと並びます。さらに、群馬では珍しく、電動キックボードの販売・修理も行っています。
今回は、N-garageの中嶋さんに電動キックボードの販売や工具レンタルを始めた経緯、そしてシェアリングサービスにかける想いを伺いました。
INDEX
――現在の事業内容を教えてください。
中嶋さん:トラックや大型トレーラーなどの大型車両の出張整備、電動キックボード・電動アシスト自転車・電動バイクの販売、工具レンタルサービスを行っています。
――どのような経緯で事業を立ち上げたのでしょうか?
中嶋さん:もともとは整備工場でトラックや大型トレーラーなど、大型車両の整備士をしていました。9年ほど勤めて知識と経験を蓄え、2023年5月に独立して、N-garageを立ち上げたんです。最初は、大型車両の出張整備業としてスタートしたんですよ。
ーー工具レンタルを始めた経緯も教えてください。
中嶋さん:トラックの出張整備を行っているので、工具もたくさん揃えているのですが、集めるのが趣味になってしまい(笑)。仕事で使う道具にはこだわりを持っており、なかには高価なものもあります。高価な工具は一般の方が購入するのはハードルが高いけど、レンタルだったら気軽に試せると思うんです。私が使っていないときに利益を生んでくれるのであれば、私もレンタルしてくれた方も幸せだなと思い、セカンドビジネスとして始めました。1回の修理のためだけに工具を買うと、私にとっては赤字なんですよね。でも、それをレンタルに出せば自分にとっても試したい方にとってもプラスになります。
ーー出張でトラックの整備をしていると、道具を一式持って行かないといけないわけですよね。
中嶋さん:そうなんです。トラック運転手さんは、トラックがきちんと動かないと仕事になりません。走らないと収入にならないんです。そのため、トラックが故障した場合やメンテナンスは、休みの日が望ましいんですよ。トラックを移動させるのも手間になりますから、出張で対応できるものは現地で整備を行っているんです。その際に「工具が足りなくて修理できませんでした」とは口が裂けても言えません。必ず直さなくてはいけない。だから、使う道具にはこだわりを持って、たくさん用意しています。
また、修理内容によっては現地では対応できず、きちんと工場で修理しなければいけない場合もあります。電話で状況を説明してもらえればどのように修理すれば良いかお伝えできますよ。
ーートラックの整備と道具のレンタルはどのように調整しているのでしょうか?
中嶋さん:トラックは乗用車と違ってメーカーが少ないんです。メーカーごとに使う工具は違います。そのため、道具のレンタル状況に合わせてトラックの整備をしています。
――そこから、電動キックボードを扱うようになったのはなぜですか?
中嶋さん:トラックだけではなく、もともと乗り物全般が好きで。ある日、電動キックボードが欲しくなったので購入したんです。しばらくして、そのキックボードの不具合でリコールが起きました。ただ、私は自分で直せると思ったので「部品を送ってくれれば自力で修理しますよ」とメーカーに連絡したんです。するとメーカーから「N-garageで弊社のキックボードを販売してくれませんか?」と、提案をもらって。群馬県で電動キックボードの修理ができる店が少ないということで、声をかけてくれたみたいです。2024年2月から株式会社Acalieの正規代理店として、電動キックボードの販売と修理を行っています。
N-garageで取り扱っている電動キックボード
ーー電動キックボードの取り扱いを始めてから、お客様の反応はいかがですか?
中嶋さん:「手軽な乗り物」として人気で、そんなに宣伝に力を入れていないにもかかわらず、多いときは週1台のペースで売れています。車を出すほどの距離ではない2〜3キロほどの移動に使っている方が多いようです。近所のコンビニやドラックストアなどに行くときですね。
ーー購入者は何歳くらいの方が多いのでしょうか?
中嶋さん:20代の若者に人気だと想像して販売し始めたのですが、意外なことに購入者の7~8割が50代なんですよ。免許を返納したあとの移動手段として考えられているのかもしれません。狭いボードの上に立って移動するのが怖いという方もいて、レンタルして使い心地を試してから購入する方も多いです。
その場で試乗できる電動キックボード
ーー修理の依頼も多いのでしょうか?
中嶋さん:「Acalie以外のキックボードでも修理できますか?」というお問い合わせも多くもらいます。電動キックボード自体が世に出はじめたばかりなので、修理対応できるところが少ないようです。自転車のように自宅で簡単に直せるものでもないですしね。アフター部品のお問い合わせも多く、月に40~50件くらい全国発送している状況です。アフター部品がないメーカーもあるなか、Acalieは部品がすべて揃っています。故障してもきちんと直せるのが強みですね。また、当店ではすぐに修理に対応できるよう必要な部品はすべて揃えています。
ーー電動キックボードは、使い方の面で問題になっていますよね。何か対策はありますか?
中嶋さん:電動キックボードはルールを守れば、便利で安全な乗り物です。ただ、逆走してしまうなど、使い方を誤ったニュースを見ますよね。そこで、誤った使い方を防止するために群馬県警と協力して講習会を開こうと思っています。警察の方にも電動キックボードを購入してもらい、特性を理解したうえで取り締まりや交通ルールの周知徹底に活用してもらえるよう取り組んでいます。
ーー電動キックボードはシェアリングのイメージが強いですが、レンタルも開始するのでしょうか?
中嶋さん:レンタルのお問い合わせもいただくのですが、保険の関係でまだ始められていません。電動キックボード自体が新しいものなので、保険もまだ種類が揃っておらず、金額が高いのがネックになっています。今後、保険商品が増えれば価格も下がってくると思います。安心して利用してもらえる環境が整ったら、レンタルサービスも展開していきたいと思っています。
ーーところで、よくレンタルされる工具は何ですか?
中嶋さん:剪定ばさみや芝刈り機などのシーズンものが多いですね。必要なのは夏だけなので、保管場所や手入れのことを考えるとレンタルした方が管理が楽なんです。また、高圧洗浄機は試しに使ってみたいという需要が高いですね。
Makita(マキタ) 充電式草刈機
ーー個人または法人、どちらの利用が多いのでしょうか?
中嶋さん:9割が一般のお客様です。群馬は持ち家の方が多く、庭の手入れも自分でやる場合が多いんです。チェーンソーをレンタルして自分で手入れをする方もいます。
ーーチェーンソーは一般の方でも扱えるのでしょうか?
中嶋さん:操作自体は意外と簡単なんですよ。それに、最近のものは安全装置が二重でついていますし、危険なときは手を離してもロックがかかって止まるといった機能もあるので、一般の方でも使いやすいですよ。
ーー他に、おすすめの商品はありますか?
中嶋さん:DIYをしたい方向けに、アースマンというブランドを揃えています。たとえば「家を建てたけど、ウッドデッキだけ自分で作りたい」「工具を自分で揃えるほどではないけれど、何日かだけ使いたい」というご要望に応えられます。
ーーレンタルサービスに対して、「返却が面倒」という声も聞かれるのですが、貴社では何か対策をしていますか?
中嶋さん:現地レンタルに限りますが、防犯カメラを取り付けて、無人返却の仕組みを整えました。私も常に事務所にいられるわけではないので、お客様にも手間にならない方法として考案しました。返却の際は電話をもらい、あとから確認して完了という流れです。試しにやってみたら、評判がよくて。現地レンタルのハードルを下げられたと思います。
ーー素晴らしい仕組みですね!今後取り組んでいきたいことはありますか?
中嶋さん:レンタル商品のバリエーションをもっと増やしていきたいと考えています。具体的には、掃除系の道具を増やしたいですね。高圧洗浄機やクリーナー関係などは、必要なのは引越しの際などの限られた場合だけですよね。レンタルの需要はあると思うので、力を入れていきたいです。
また、今後は車両診断機の需要も高まると予想しています。最近の車は電子制御がたくさんあり、コンピューターがないといじれない部分があるので、車両診断機が必要になるんです。ただ、高価なものですし、購入するよりもレンタルしたいという需要があると思います。
ーーSUUTAに期待していることを教えてください。
中嶋さん:宣伝やマーケティングはなかなか手が回らないので、SUUTAに掲載することでの宣伝効果に期待しています。また、今後はトラックの整備事業は減らしていき、電動キックボードを含めた電動モビリティ関連の販売に力を入れていきたい思っています。電動モビリティ関連の商品数も増やしていきたいので、今後は工具レンタル以外でもSUUTAの宣伝力を借りたいですね。
ーーこちらこそ、よろしくお願いします。
中嶋さん:今後シェアリングの文化が当たり前の時代になれば、社会が大きく変わると思うんです。それに、家電やインテリアは買うと高いけれど、レンタルだったら安く抑えられるので、ニーズ自体はあると思うんです。ただ、まだまだレンタルへの認知が足りていないし、なじみがないんですよね。サブスクサービスが社会に浸透していったように、レンタルサービスも徐々に広まっていくと思います。SUUTAさんに周知をがんばっていただいて、私たちも工具レンタルをもっと世の中に広めていきたいですね。
ーー中嶋さん、ありがとうございました!