コロナ禍以降の働き方の変化やフリーランスの増加に伴い、どんどん増えているコワーキングスペース。机や椅子があるのはもちろん、Wi-Fiや電源など仕事をするうえで必要なインフラが揃っています。オフィスを借りるよりも経費を削減できるとして、社員をコワーキングスペースに集めて働く企業もあるようです。
フリーランスでライターをしているSさんは、地元のコワーキングスペースの常連。コワーキングスペースをレンタルしはじめた経緯や、使い続ける理由を聞きました。
Sさん(30代、女性)
職業:フリーランスのライター
ライフスタイル:配偶者と2人暮らし
レンタルしたもの:働く場所(コワーキングスペース)
1年前からフリーランスのライターとして働くようになったとSさん。フリーランスになってしばらくは自宅にこもって仕事をしていましたが、外の空気を吸わないとストレスが溜まることに気づきます。さらに、自宅にいるとつい掃除をしたり、マンガを読んだり、アニメを見たりと気が散り、仕事に集中できなかったそう。そこで、集中して働ける自宅以外の場所を探すことにしました。しかし、快適に働ける場所探しは意外と難航したと言います。
「最初は近所のカフェに行っていました。ライターの仕事は基本的にパソコン一台あればできます。そのため、Wi-Fiも充電もあるカフェはインフラ面は十分でした。ただ、2時間ぐらい滞在すると、お店が混んできたしそろそろ退店した方がよいかな……?という気持ちになってソワソワしてしまいます。隣の人のおしゃべりがおもしろくて仕事に集中できないこともありました。周りの人が全員おしゃべりをしていたときは、私も仕事をせずに人と話がしたい!なんて気持ちになりましたね」
その後、働く場所として、図書館や公園も検討してみたというSさん。ところが、近所の図書館はパソコン持ち込み不可のところが多いし、公園は天候に左右されるうえ、気候がよいと気持ちがよくて寝てしまう……。そんな悩みをフリーランス仲間に相談したときに教えてもらったのがコワーキングスペースでした。
「そのフリーランス仲間は、自宅では集中できないからコワーキングスペースを月額でレンタルしていると言っていて。行くと仕事モードになれるしおすすめだよと教えてくれました。そこで、自分も近所で探してみることにしたんです」
さっそく、インターネットで近所のコワーキングスペースを検索。すると、自宅からすぐのところに1軒あることがわかりました。
次の日、近所のコワーキングスペースに立ち寄ってみたSさん。良い意味で期待を大きく裏切られたといいます。
「行ってみたらびっくり。そのコワーキングスペースは、老舗旅館の一部だったんです。中に入ると旅館らしく和風の作りで、檜の匂いが充満していて。優しい音色のオルゴールが鳴っていて、すごく落ち着きのある素敵な雰囲気。一歩入っただけで、きてよかったと思えました」
受付時に対応してくれるのは、旅館の女将さん。女将さんから入館証を受け取り、帰りにお金を支払う仕組みです。1時間200円という良心価格。
もちろんWi-Fi完備。一つひとつの座席には電源がついています。コーヒーやお茶も飲み放題です。窓際の1人席で外を眺めながら仕事をするのも、ほかの方が仕事をしているのに囲まれてグッと集中して取り組むのもよさそう。
「実際に使ってみると、自宅で仕事をするよりはるかに集中できました。周りの方も仕事をしているので、私も頑張らなきゃ!という気持ちになるんですよね。滞在した時間分のお金を支払う仕組みなので、心置きなく長居ができて、カフェよりもはるかにコスパがよいです」
周りがざわざわしている環境だと集中して仕事ができないという方も多いはず。その点コワーキングスペースなら、周りの人も仕事をするためにきているから、雰囲気に影響されて集中モードに入りやすいんですね。また、ダラダラ仕事をしていると料金がどんどん加算されてしまうから、「あと一時間で必ず仕上げよう!」と時間を意識するきっかけにもなります。
さらなるコワーキングスペースの魅力をSさんに聞くと「受付で女将さんが話しかけてくれて、それが楽しいんです。いつも笑顔で対応してくださって、こちらが元気をもらえます」と教えてくれました。
1人で働くことが多いフリーランスは、孤独を感じがち。ふと誰かと話したくなることもあるものです。そんなときに、行けばお話できる相手がいるというのはうれしいですね。Sさんは女将さんと、仕事の話もプライベートな話もするそうです。
「女将さんとお話をしたくてコワーキングスペースに来ている方も多いと思います。ふとしたときに聞こえてくる、女将さんとお客さんの楽しそうな話し声を聞くと温かい気持ちになりますね」
最近は、週に1度程度、しっかり集中したい日にコワーキングスペースを使っているというSさん。
「自宅で仕事をしようと思うと、ついパジャマのままでいたり化粧をしなかったり…。その点、コワーキングスペースに行くと思うと身なりを整えなきゃいけない。その時点で仕事に対するスイッチが入るというか。しっかり仕事をする日なんだというモードに入れます」
プライベートな時間と仕事の時間の切り替えが難しいフリーランスだからこそ、居場所を変えることが大切。在宅勤務で自宅にこもりがちな方の気分転換にも一役買いそうです。
最後に「今後もコワーキングスペースを使っていきたいと思いますか?」と聞いてみました。するとSさんは「もちろんです!女将さんに会うだけでもくる意味がありますから、ずっと使い続けると思います。旅館にコワーキングスペースが併設されているという特徴を活かして、この場所でフリーランス仲間と一緒に“作業合宿”も企画したいと思っています。宿泊して交流しつつ、仕事もしつつ…楽しい時間を過ごせそうです」と話をしてくれました。
コワーキングスペースについて調べてみると
などなど世の中にはおもしろい特徴のあるところがたくさんありました。
さらに、今回のSさんのように、人との繋がりを求めて通う方も多いようです。フリーランスの孤独解消のために、交流会やコミュニティの運営を行っているコワーキングスペースもあるとのこと。コワーキングスペースのレンタルは、新たな出会いのきっかけとしても活躍してくれます。
コワーキングスペースというと「仕事をするための場所」というイメージでしたが、人々の自由な働き方・生き方を支える今の時代に必要不可欠な居場所になっているんですね。気軽に場所をレンタルできるコワーキングスペースだからこそ、自分に合ったお気に入りのところを探すのも、働くうえでの楽しみの一つになりそうです。